『労働時間』 社会保険労務士 中家延子

4回目は「労働時間」について取り上げたいと思います。
近頃新聞やテレビニュースでよく目や耳にする労働問題に、割増賃金の不払い(サービス残業)や長時間労働が原因となる健康障害があります。自分の職場は大丈夫だと過信せず、今一度基本に立ち返って職場の労働時間を見直してみてはいかがでしょうか。

【労働時間の原則】
 労働時間とは、労働者が使用者の指揮監督下にある時間のことです。労働時基準法では1週40時間・1日8時間までを法定労働時間と定めています(常時9人以下の労働者を使用する事業場で、商業・映画・演劇業・保健衛生業・接客娯楽業などの特例措置対象事業は1週44時間・1週8時間)。

【労働時間と休憩時間】
 休憩時間は原則として全ての労働者に一斉に与え(例外あり)、自由に利用できるようにしなければなりません。労働基準法では、労働時間が6時間を超えたら45分、8時間を超えたら1時間の休憩を、労働時間の途中に与えなければならないと定めています。

【労働時間と休日】
 休日とは、労働の義務がない日のことで、原則として暦日(午前0時から午後12時までの24時間)で与え、1週間に少なくとも1日、或いは4週間に4日以上の休日が必要です。

【時間外労働・休日労働
 先述のように労働時間・休憩時間・休日が労働基準法で定められているにもかかわらず、所定の労働時間内に仕事が終わらない場合、残業や深夜労働・休日に労働しなければならないことがあります。このような時は労働基準法第36条に定める「時間外及び休日労働に関する協定届」(36協定)を所轄の労働基準監督署へ届け出なければなりません。

【労働時間の多様な制度】
 業種や職種によっては様々な勤務形態があり、それに見合う労働時間が労働基準法で設けられ、以下のような制度があります。
1)1ヶ月単位の変形労働時間制
例えば月末月初が忙しいため所定労働時間を長くするかわりに比較的暇な月の中旬に所定労働時間を短くし、その1ヶ月の期間を平均したときに1週間の労働時間が40時間以内となるよう、1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させることができる制度。就業規則の変更や労使協定の締結・届出が必要。
2)1年単位の変形労働時間制
1年を通じて特定の月や特定の季節が忙しい場合、その閑散に合わせて所定労働時間を変更し、1年以内の期間を平均したときに1週間の労働時間が40時間以内となるよう、1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させることができる制度。就業規則の変更や労使協定の締結・届出が必要。
3)フレックスタイム制
1ヶ月以内の一定期間の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で各日の始業・終業時刻を選択して働くことができる制度。定められた一定期間の労働時間が1週間平均で法定労働時間を超えなければ時間外労働にはならない。就業規則に制度を設けることを規定し、労使協定を締結することが必要。
4)事業場外のみなし労働時間制
事業場の外で業務を行い、指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な場合でも所定の労働時間労働したものとみなす制度。
5)裁量労働制
専門的業務や事業運営の企画・立案・調査・分析などの業務についてその性質上、使用者が具体的に指示をせず、労働者自身の裁量に委ねる制度。

【労働時間の管理】
 時間管理には使用者が現認し、タイムカードなどで客観的な記録をとることがまず必要です。時間管理ができていないと時間外や休日に労働した分に見合うだけの割増賃金が適正に支払われなかったり、働きすぎによる健康障害の防止対策を的確に講じることもできません。時間管理ができれば、残業が多すぎる場合の原因究明、業務の偏りがないかなどの問題点を検討し、改善策につながります。
 業務の多様化により時間管理はますます重要な業務となりました。変形労働時間制の導入や年次有給休暇の有効な取得、無駄な残業・残業の慢性化をなくすなど、労使双方が健康的に労働できる職場環境作りに目を向けましょう。