営業許可をナメると怖いことに? 行政書士 富之浩


わが国は、行政による護送船団方式で戦後の高度経済成長を成し遂げました。つまり、行政による規制を用いて経済産業の発展や国民の安全を守ってきたわけです。
しかし、バブル経済の崩壊以降、不況を脱するために規制緩和策をとることで、独立開業や新規参入をしやすい、また産業の移行(例えば製造業からサービス業へ)をしやすい社会体制を整備してきました。
しかし、これは規制緩和をするかわりに、違法業者には厳しく罰則を与えることが抱き合わせとなっていることを忘れてはなりません。つまり護送船団方式から「事後チェック型社会体制」へ移行してきているということです
そこで、行政書士からみた立場で事後チェック型社会の怖い事例をご紹介しておきたいと思いますので、参考にしていただきたいと思います。

1.建設業における事例
「建設業法」に基づく許可が必要です。(一定規模の工事を請け負う場合)
住宅リフォーム詐欺が多発した影響を受けて、悪徳業者を摘発する際に業法違反を問われるケースがあります。
具体的には、無許可営業、欠格事由(必要な資格者が不在)、虚偽申請を理由に罰則を受ける場合があります。このような違反行為には「3年以下の懲役または300万円以下の罰金(業法第47条)」と定められています。

2.産業廃棄物処理業における事例
廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づく許可が必要です。
地球の環境問題が深刻化していることを受けて、産業廃棄物の不法投棄については大変罪が重く、法人の違反の場合「1億円以下の罰金(業法第32条第1項第1号)」と定められています。しかも、罰則を受けるのは、不法投棄をした業者だけでなく、産業廃棄物を出した排出事業者も罰則の対象となっています。マニュフェストの管理はしっかり確実に行なうことが重要です。
3.風俗営業における事例
風俗営業の規則及び業務の適正化に関する法律」に基づく許可が必要です。
風俗といっても性風俗に限らず、キャバレー、クラブ、パチンコ、麻雀、ゲームセンターもこの業法に基づく営業許可が必要です。
特にクラブやスナックにおいては、お客様に対しての接待行為の有無で許可が必要かどうか判断しますが、この判断は、管轄の警察署生活安全課又は行政書士に相談されることをおすすめします。
無許可営業に対する罰則は、「2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する(業法第49条第1項)」と定められています。
風俗営業では、営業時間が規制されており、地域の条例によっては多少の差がありますので、知らずのうちに業法違反をして罰則を受けることがないよう注意が必要です。
4.労働者派遣事業における事例
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備に関する法律」に基づく許可が必要です。
許可を取得するには、零細企業にとっては比較的厳しい財産的要件が定めらており、許可を取得できない業者が無許可営業を行なって罰則を受けるケースがあります。
具体的には、実態としては派遣業をしているにもかかわらず、契約書などの形式を請負業務や委託業務としている場合が問題となります。これを偽装請負といいます。
無許可営業に対する罰則は、「1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処する(業法第51条第1項)」と定められています。
また、許可を取得しても派遣業種や派遣期間の規制を守らない場合も罰則の対象となりますので注意が必要です。

5.建築士事務所における事例
耐震偽装問題が社会問題化してから建築士等に対する業務の適正化及び罰則の強化が図られています。
平成19年5月から国土交通省の定めた「一級建築士の懲戒処分の基準」が施行されており、違反の内容ごとにランク付けされ、悪質性についても過重軽減ランク表が定められており、監督官庁の処分がこれに従って行なわれるようになりました。
ちなみに耐震基準などの重大な実体規定違反については、法人の場合「1億円以下の罰金(建築基準法第104条)」となっています。
また、建築士建築士事務所の名貸し、建築士による構造安全性の虚偽証明については、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する(建築士法第38条第1項)」となっています。



以上のように、営業許可を取得して事業を行なっているだけでは、安心できる時代ではありません。自社の営業許可の根拠となる業法を知らないと思わぬところで罰則を受けるかも知れません。
重要なことは、許可を取得した後、その業法に適した運営をすることがポイントです。そのためには、行政書士を有効に活用されることをお勧めします。