『賃 金』社会保険労務士 中家 延子

3回目は「賃金」について取り上げたいと思います。
〔賃金の定義〕
労基法11条は「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他の名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者支払うすべてのものをいう。」としています。
すなわち賃金とは、「労働の対償」として、「使用者が労働者に支払うすべてのもの」であり、これに該当するものは名称の如何を問わず賃金として取り扱われます。
従って、結婚祝金、病気(災害)見舞金、忌慰金等任意的・恩恵的なもの、社宅貸与、給食等の福利厚生給付、制服・作業服・旅費等は賃金にはなりませんが、通勤手当や現物支給の通勤定期券は賃金として取り扱われます。


〔賃金支払いの5原則〕
労基法24条では、賃金は、1.通貨で 2.直接労働者に 3.その全額を 4.毎月1回以上 5.一定期日に支払うこと と定めています。

(1)通貨払いの例外
1.法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合
2.使用者が労働者の同意を得た場合
  労働者が指定する金融機関の労働者名義の口座への振込み
  (この場合、労働者の同意については書面による必要はありません)

(2)直接払いの例外
1.本人の使者として受け取りに来た場合、使者に支払う
2.労働者派遣事業の事業主が、派遣中の労働者に派遣先の使用者を通じて支払うこと

(3)全額払いの例外
1.法令に別段の定めがある場合
  給与所得税源泉徴収社会保険料の控除
2.労使協定を締結した場合

(4)毎月1回以上の例外
1.臨時に支払われる賃金
2.賞与
3.1ヶ月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当
4.1ヶ月を越える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
5.1ヶ月を越える期間にわたる事由によって算出される奨励加給又は能率手当

(5)一定期日払いの例外
1.非常時払い (出産・疾病・災害等)
2.金品の返還


〔平均賃金〕
解雇予告手当(労基20条)、休業手当(同26条)、年次有給休暇に対する賃金(同39条6項)、業務上災害に対する休業・障害等保証(同76〜82条)、減給の制裁の制限(同91条)の場合に算定します。
(1) 算出方法
算定すべき事由の発生した日以前3ヶ月間に当該労働者に支払われて賃金総額を、その期間の総歴日数で除した金額

1.算定の基礎に算入される賃金
  原則として賃金のすべて(通勤手当を含む)
2.算定の基礎の算入しないもの
 イ 3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
 ロ 臨時に支払われた賃金
 ハ 通貨外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないもの


〔割増賃金〕
労基法で定める法定労働時間(1日8時間、1週について原則40時間)を超える時間外労働について、割増賃金を支払わなければならない。ただし、法定労働時間を越えない超過勤務については、法律上割増賃金を支払う義務はなく、通常の賃金を支払えば足ります。
休日は法定休日をいいます。法定休日とは毎週1日又は4週間を通じ4日の休日をいいます。     
(1)割増賃金の算定除外賃金
1.家族手当(労働者に一律支給されている場合は除外できません)
2.通勤手当(労働者に一律支給されている場合は除外できません) 
3.別居手当
4.子女教育手当
5.臨時に支払われた賃金
6.1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
7.住宅手当
(2)割増賃金を支払わなくてもいい場合 
1.法定休日を与えている場合において、それ以外の休日に労働させるとき
2.就業規則に基づいて休日を振り替え、当初の休日であった日に労働させるとき 
※ ポイント 派遣労働者の割増賃金について
派遣先の使用者が派遣中の労働者に法定時間外労働を行なわせた場合は、派遣元の使用者が割増賃金を支払う義務を負います。労働者派遣契約上派遣先の使用者に法定時間外労働を行なわせる権限があるかどうかは問いません。