最近の「不正・不祥事」事案から学ぶこと 弁護士 小田 宏之

コンプライアンス法令遵守)で企業を活かす〜


最近のマスコミ報道を見ていますと、業界の最大手企業や業界全体、地方公共団体、国の省庁、テレビ局などの不正・不祥事事案が頻繁に報道され、途切れることを知りません。
具体的には、加工食肉の原材料を偽装して販売した事案、消費期限切れ原材料使用事案、語学学校最大手による不当勧誘、解約時不当精算事案や、呉服販売最大手(既に破産)による強引な着物販売事案、訪問介護最大手による介護報酬不正請求事案、公共事業の談合事案や公共団体内部の裏金事案、テレビ局のデータねつ造問題、サービス残業代未払問題、消費者金融業者の「グレーゾーン金利」不当取得問題、等々です。


また、これら不正・不祥事発覚の結末における近時の特徴は、不正行為等やそれに引き続く隠ぺい偽装工作が暴露されたため企業が解体に追い込まれる、企業の役員や地方公共団体の首長の逮捕といった刑事事件に発展する、企業や団体トップの引責辞任、当該企業への業務停止命令など厳しい行政処分が下される、一社員の不祥事により組織全体の信用が失墜する等、不正・不祥事を起こした組織、団体が致命傷や深傷を負う結果となることが少なくないことです。
これは、不正・不祥事は許されないという「当たり前」の意識が社会に定着し、それを受けて、司法当局や監督官庁が厳格に対処している結果に他ならないと思われます。


以上の現状を踏まえますと、現在及び今後、違法不当な行為を行っている企業や団体はいつしか「落とし穴」に落ち込む恐れが高いこと、また、その「落とし穴」は企業や団体を再起不能に追い込むほど深く悲惨なものであると言えます。
それでは、「落とし穴」に落ち込まないためには、どのようにすれば良いのでしょうか。

  • まず、「違法行為は行わない」ということです。前述の具体的事案の大半が、法令違反の違法行為です。
  • 次に、「顧客・消費者・ユーザーの利益を踏まえた事業を行う」ということです。事業を行う上では当たり前のことであって、そもそもこのような意識が無ければ事業は直ぐに行き詰まると思われるのですが、特に消費者被害事案においては、全て、顧客や消費者を「食い物」にしていると言われても仕方のない事案です。また、テレビ局のねつ造事案も、ユーザーを蔑ろにしたものと言えます。
  • 更に、業界の「悪しき慣行」とは決別すべきです。談合や裏金事案が正に適例ですが、一般の取引社会においては当然に行われている事柄(契約書の作成など)が出来ていない業界においては、むしろ「一番乗り」の積もりで手間暇労力を惜しまず「社会の標準レベル」に追い付く意識が必要かと思います。


コンプライアンス法令遵守)とは、手間暇がかかる割には直ぐに利益に反映しない、少々やっかいな理念とも言えます。しかし、重要なことは、今日、コンプライアンスを軽視、無視し不正や不祥事を起こした場合、それを許してくれない世の中になっているということです。
私は、「法令遵守」は事業の成長にとって「急がば回れ」の理念であり、逆に、この理念を守れない企業や事業者は、早晩、淘汰されていくと思います。
すなわち、今日においては、コンプライアンスの理念により地道に信用を重ね、「信頼される、まともな企業」になることが、企業発展・繁栄の重要な一要素になるものと考えます。