在留特別許可とは 行政書士 山田啓子

2007年4月26日、不法残留で最高裁が退去強制処分を決めた群馬県高崎市のイラン人一家が、在留特別許可が認められた長女を日本に残してイランに帰国しました。一方、翌月の5月11日、東京入国管理局は、同じく家族で不法残留中であった甲府市のイラン人一家4人に在留特別許可を出しました。

 「在留特別許可」とはどのようなものかご存知ですか?

外国人が日本で不法滞在や違法就労をしていることがわかれば、原則、入国管理局に収容され、退去強制手続(強制的に出国させる手続)がはじまります。しかし、日本人と結婚している等、一定の事情がある場合には、法務大臣の裁量によって特別に日本での在留を認められる場合があり、これを「在留特別許可」と言います。
入国管理局は、「在留特別許可に係るガイドラインhttp://www.moj.go.jp/NYUKAN/nyukan52-1.pdf で、「在留特別許可の許否に当たっては、個々の事案ごとに、在留を希望する理由、家族状況、生活状況・・・の必要性、更には我が国における不法滞在者に与える影響等、諸般の事情を総合的に勘案して判断する」としています。このように許可にあたって明確な基準はありませんが、積極的要素として日本人や永住者等の配偶者や実子であるといった(身分)に関係する場合には、在留特別許可を得られることがあります。つまり、夫婦関係や親子関係が真実であれば、在留許可を得る可能性があるということです。
一方で、このイラン人家族のように、日本人や永住者等との身分関係がない場合は、在留特別許可を得るのはとても困難です。しかし、何十年という長期間の不法滞在中に、子どもが生まれ、成長し、進学や就職する年齢に達するようになると、日本での生活を希望して入国管理局に出頭する外国人家族が増えています。母国(例えばイラン)といっても、子どもにとっては言葉も習慣も違う外国であり、帰国してもその国で生活することが困難です。かといって日本での不法滞在を続けると、健康保険や社会保障制度の枠外におかれたままで、不安定な状況から抜け出せません。このような理由から、出頭し、在留許可を求める家族が増えているのです。

現実に多くの外国人が日本で暮らすようになり、日系ブラジル人・ペルー人子弟の就学問題のように、それ故に生じる問題が増えています。イラン人家族のようなケースで積極的に在留許可を与えるかどうか、また、現実に起こっている外国人の問題にどのように対処していくかを判断するのは、高度な知識やスキルを持った外国人を積極的に受入れるのか、知識やスキルがなくとも日本に定住しようとする外国人を積極的に受入れるのか、という日本の姿勢が問われているように思います。