中小建設業者、時代を生き抜く秘訣 行政書士 富之浩

かつて、公共事業を発注することで景気の動きを調整しようとしていた社会体制は崩れ、今や「談合」「贈収賄」などの事件多発により、指名競争入札制度から一般競争入札制度へと時代が変わりつつある建設業界は、ますます生き残りを賭けた厳しい時代を迎えています。
また、需要が減少傾向にあるにもかかわらず、建設業者の廃業者が多い分同じくらいの数の開業者があるため、全体的な許可業者数はほとんど変化が見られないこともその要因といえます。
このような背景のなかで、中小建設業者はどのようにして厳しい時代を生き抜いていけるのかについて、建設業の「経営事項審査(経審)」を扱う行政書士の立場から意見を述べてみます。
ちなみに経審とは、主に公共工事を受注するためにその前段階として経営規模等の点数化(総合評点)を図るものです。つまり、その総合評点に基づいて官公署が建設業者の格付け(例えばA〜Dランクなど)を行い、さらにランクに見合った規模等の工事を発注するという制度となっているわけです。


1.建設業許可を取得すること
建設業許可は、一定の軽微な工事であれば必要はありませんが、最近ではリフォーム詐欺が多発した影響で、一般消費者や元請業者が工事を発注する際には、建設業許可を取得しているかどうかが大きな判断材料となっているようです。

2.特殊な技術を売りにする。
特殊な技術を持っていなければ、同業他社とは請負金額での競争になることが多いでしょう。しかし、特殊工法や特殊な材料を用いることができれば、それほど厳しい値段競争に悩まされることはないでしょうし、工事受注のチャンスも多くなるはずです。

3.経審の評点アップに努める
公共工事を受注するためだけではなく、取引先に対する信用や自社の経営状況の判断材料として、経審を受けられることをおすすめします。
経審において評点アップを目指すには、営業利益を出すことが先決です。そのためには日頃から工事台帳をつけるなどして、原価管理をしっかりと行なうことです。
その他、固定資産はできるだけ増やさないようにしたり、外注費を抑えて自社施工に重点をおいたりすれば評点アップに繋がります。具体的には行政書士にご相談ください。

4.官公署に「指名願い」を出しておく。
「指名願い」とは、公共工事を受注したい官公署に対して業者登録をしてもらうための申請です。(正式名称「一般(指名)競争入札参加資格審査申請」)
例えば京都府に対して指名願いを出していなければ、京都府から一定規模以上の公共工事の受注はできないというものです。つまり、指名願いを出しておかないと公共工事の受注は見込めないのです。
一方、官公署にとっては、地元業者に優先して発注する例が多く見られますので、その点を考慮して、指名願いを出す官公署を絞られることをお勧めします。

5.電子入札は受注のチャンス。
平成19年度以降は、多くの官公署において公共工事を発注する際の電子入札制度が開始しています。したがって、現在既に複数の官公署に指名願いを出している建設業者におかれても、この電子入札対応可能な環境設定をしておかなければ、指名願いを出している意味がありませんので要注意です。
中小建設業者においては、事務職の従業員を雇用する余裕がないためか、この電子入札の環境設定が未だに完了していない業者をよく見受けられます。
入札制度の電子化は、ある意味においては時代に勝ち残るための試金石となっているのではないでしょうか。そうであれば、早く電子入札に対応できることが公共工事受注のチャンスとなるはずです。