これってバブル!? 不動産鑑定士 秋田 悟朗

3月の下旬に国土交通省から平成19年の地価公示価格が発表されました。
新聞・TV等メディアでも取り上げられていたのでご存じの方も多いと思いますが、住宅地・商業地ともに全国平均で上昇を示すなど、バブル崩壊以来16年ぶりにプラスに転じることとなりました。特に東京、大阪、名古屋の三大都市圏での地価上昇傾向が一段と鮮明となり、京都でも、京都中心市街地を中心に大幅な上昇を示す地点が広がり、周辺部においても阪急桂駅周辺や長岡京市など利便性の高いエリアで大幅な上昇が見られる結果となりました。
こうした結果やメディア報道などを見てますと、地価上昇・高騰がいよいよ本格化してきて、まだまだ上昇が続くかのように感じるかもしれませんが、現実には、大都市圏ではおおむね既に上がりきってピークアウトしており、こと京都の中心部においては、ここ数年の過熱感の反動と新景観政策の影響が相まって、今年に入ったあたりから明らかに下落に転じているエリアも少なくありません。
もちろん、下落といっても、ヒートアップで上がりすぎた分が剥げ落ちただけで、バブル経済崩壊後の本格的な地価下落とはまた違う類のモノですが、今回のファンド主導による急激な不動産価格上昇をめぐって、バブルであるかどうかの論争がわき起こっているのも事実です。
バブルかどうかについてここで掘り下げるつもりはありませんが、最近のメディアの論調で気になるのが、「不動産価格の決定方式がDCF法などの収益還元を主体とするようになり、投資家のリスク・リターン分析に基づき合理的に決定されているので、土地神話を背景としたキャピタルゲイン目的の以前のバブル期とは根本的に異なる」ような趣旨でほぼ一本化されている(ように見受けられる)ことです。
この論調が全く間違っているとまではいいませんが、収益還元法を用いたところで、賃料予測や還元利回り・割引率次第で高い価格を正当化してしまうことはいくらでも可能で、事実、一部のマーケットにおける利回りの低下は行き着くところまで来た感すらあります。
利回りの低下については、REITや投資ファンドによる分散投資効果や、国債利回りとの格差(ニューヨークやロンドンではマイナス!)を根拠に、まだまだ低すぎることはない、とも言われますが、その是非はともかく、それを取り上げて検証を試みる論調が、(少なくとも)大手メディアからまだあまり見られないことに違和感を感じるのは私だけでしょうか?