従業員の募集・採用 社会保険労務士 中家 延子

はじめまして。社会保険労務士の中家(なかいえ)と申します。
業務内容は、社会・労働保険関係書類の作成、届出。給与計算業務。従業員の募集・採用、退職までの人事・労務管理のサポート業務。各種助成金、給付金、奨励金の申請。就業規則、賃金規定諸規定の作成及び相談。老齢、障害、遺族年金の相談及び請求を行っております。


まず1回目は、「従業員の募集・採用」について取り上げたいと思います。
Ⅰ.募集のポイント
男女雇用機会均等法」により、労働者の募集及び採用における女性に対する差別が禁止されており、募集及び採用の対象から女性を排除すること、男女で異なる取扱をすること、また、女性のみを対象とすることや女性を優遇とする取扱いについても、原則禁止されています。

(1)採用計画を立てる
1.必要人数の把握 
各部門でどのような従業員が必要なのか、会社全体の必要人数を把握する。
2.職務の必要な能力の明確化  
仕事を分析し採用に必要な、年齢、学歴、専門知識・技能、性格、肉体能力等を明らかにして採用基準を設定する。
3.採用形態の決定
新卒者か中途採用か、正社員かパート・アルバイトか契約社員かを決定する。
4.予算の立案
求人広告費、入社案内の作成費、DM費用、入社試験実施費用、交通費等の費用の見積。
5.長期採用計画の立案
的確な現状把握と将来への見通しを立て、人員計画を作る。


(2)募集の方法
1.ハローワークの利用 
老若男女が利用するが、求人募集に法律的な部分で制限を受ける。   
2.学校利用(新卒) 
新卒者を採用できるが、求人募集に法律的な部分で制限を受ける。 
3.民間職業紹介所の利用 
広範囲で人をさがしたい時。 
4.新聞・雑誌等の広告掲載、貼紙 
老若男女が目に付き、即、仕事に就きたい人の目にとまる。
5.インターネット
広域に情報を発信でき、自社のHPがあれば、自社の内容を理解してもらえる。
6.ネットワーク等
紹介者がいるので、応募者の信頼性が高い。

 ※ 募集に際し、費用を無駄にしないように、必要な人材がどのような求人情報を見るのかを確認してから募集しましょう。


Ⅱ.採用のポイント

(1)採用の基準
1.一般常識・教養 
2.専門的知識・技能 
3.学業成績(新卒)
4.経験の有無(中途採用者)
5.能力 ア 語学力 イ 想像力・企画力 ウ 理解力・判断力 エ 表現力
6.性格 ア 熱意・意欲 イ 協調性 ウ 積極性 エ 誠実性
7.年齢、健康・体力 
8.出身校
 
(2)選考方法の種類
1.書類選考 
 応募に必要な資格要件、能力、適正を評価する。
ア 履歴書 イ 身上書 ウ 成績証明書 エ 卒業(見込)証明書等の提出

2.学科試験  
知識、判断力、想像力、表現力を評価する。
ア 学科テスト、性格検査、論文

3.適正検査  
能力、適正、性格を評価し、採用後の配置に役立てる。
ア 知能検査 イ 特殊能力・職業適性検査 ウ 職業興味調査 エ 性格検査

4.面接試験   
質疑応答して人物を評価する。面接時に、労働条件や給与、業務内容についてきちんと説明をし、応募者に確認をとることが必要です。
ア 個別面談 イ 集団面談 ウ 集団討論

5.健康診断   
既往症、現在の健康状態や視力、聴力,色弱等を評価。
   
(3)採用の自由
採用は、使用者が労働契約を締結するか否かの問題です。何人採用するか、誰と契約するか全く自由に行えますし、どのような基準で採用するかも自由に設定できます。

(4) 採否決定通知
選考結果は一般的には文書で通知しますが、必ずしも文書による必要はなく、通知すべき事項が間違いなく伝われば口頭でもさしつかえありません。採用通知を本人に文書でする場合は、ア 出社日時 イ 出社場所 ウ 出社時の提出書類を記載します。

※ 通常、採用通知をした時点で労働契約が成立します。
また、不採用通知は、早目に発送し、選考の際に提出を受けた書類や作品は返すことを忘れてはいけません。

★ 採用決定者に、身元保証または身元保証契約を提出させるものも一般的です。労働者本人が会社に損害を与えた場合に、保証人にその損害賠償をさせるものですが、保証人が不当に長く重い責任を拘束されないよう、身元保証に契約期間の上限が定められています。期間を定めて身元保証契約を結ぶとき5年を限度として有効期間としますが、契約更新することはさしつかえありません。特に期間を設けないときは3年までとされています。 (身元保証ニ関スル法律)