転ばぬ先の法律知識紹介 弁護士 小田宏之

はじめまして、弁護士の小田宏之です。
少し自己紹介をさせて頂きます。
私は1999(平成11)年4月に弁護士登録を行い、その後現在まで「弁護士法人みやこ法律事務所」(2006年3月までの名称は「都総合法律事務所」)にて法律業務を行っております。
なお、みやこ法律事務所のHPhttp://www.miyako-law.gr.jp/index.htmlもございますので、宜しければ御覧下さ
い。
私の、取り扱いの多い業務分野は、商取引、不動産取引(売買・賃貸借)、破産等債務処理事件、家事事件(相続、離婚、成年後見)、交通事故等損害賠償事件です。また、平常時のリーガルアドバイスや契約書作成等の予防法務にも力を入れております。
なお、京都弁護士会の活動として、民事介入暴力対策、高齢者障害者支援、消費者被害クレジットサラ金相談、法律扶助業務(法律扶助協会)等に携わってきました。
皆様がトラブルに巻き込まれないよう、また、お困りやお悩みの方にとって出来る限りサポートをさせて頂くという使命のもと、日々業務に勤しんでおりますので、どうぞ宜しくお願い致します。



 さて、本日のテーマは「転ばぬ先の法律知識紹介」です。
 日常業務に起因する法的トラブルの多くは、少しのコツや心がけで未然に防止出来ます。そこで、今回は、実際に相談の多いケースに関して、トラブル防止策を若干ご紹介したいと思います。

1 約束は「かたち」に残すこと

口約束は、まさにトラブルの元であり、いざ裁判となった場合でも真偽不明となることが往々にしてあります。
 例えば、信頼できる取引先だから書面を取り交わさなくても大丈夫、書面を作るのは手間だ、書面を求めると取引先に煙たがられる等、その時々の事情や思惑により何ら書面もないまま重要な取引等を行います。
しかし、後日になってから、「貸した金だ」「いや、借りてない(以前の未収金の支払だ)」とか、「500万円支払えば足りると聞いていた」「いや、追加で100万円必要と言った筈」などと、水掛け論の紛争に発展するケースは実に多いものです。
 このようなトラブルを回避するためには、取引等の内容を『かたち』に残すことです。正式な契約書を取り交わさなくとも、例えば、手元にあったメモ用紙に一筆メモ書きして貰う、あるいは取引条件の骨子だけでも先方からFAXして貰う等によって『かたち』にとどめ、後日、契約(取引)の内容が客観的に分かるようにしておいて下さい。
 そうすれば、「水掛け論」の紛争を未然に防ぐことが出来ます。

2 トラブルの予感を感じたら記録やメモに
 トラブルになりそう(なった)場合に、その経過(いつ、どのような交渉や発言、行動があったか等)を逐一記憶できる人はいませんし、また、時間の経過とともに記憶は薄れてしまいます。
 そうなれば、トラブルが現実化した場合に、やはり「言った」「言わない」の水掛け論になります。
 そこで、何らかの事件や不当要求等のトラブルに際しては「動き」がある都度、メモ等に記録しておきましょう。
 このような事実関係記録(業務日誌やメモ等)は、実際の裁判においても、当時の事実関係を客観的に証明する有力な証拠になることも少なくありません。

3 意味や重大性を理解せず(誤解して)取引を行うケース

 せっかく契約書を取り交わすのに、その内容を十分確認、理解せず署名押印されるケースも少なくありません。
 このような場合、一旦、署名押印を行った以上、後日トラブルとなってから「内容を良く読んでいなかった」「そんな意味とは知らなかった」と弁解しても通用しないものと思っておかなければなりません。
 そこで、署名押印をする際には「この書面には、どのような意味や重大性があるのか」を理解した上で行うようにして下さい。
 また、契約書等の意味が分かりにくい場合には、必ず事前に、専門家に相談するようにして下さい。
 以上、相談の多い事案について、トラブル回避のコツを若干紹介させて頂きました。
 何れも、誰しもが考えつくような「ちょっとしたこと」「当たり前のこと」であり、実行することにさほど困難を伴うものではありません。
経営者の方々は、極めて多忙な中で日常業務の処理等を行っておられることと存じますが、上記事案に直面した場合には、一呼吸置いて頂き、若干の手間暇を惜しまず確実な対処をして頂ければと思います。
 なお、近年は、社会情勢を反映して、関係法令や規制が目まぐるしく制定改廃されており、今後この傾向が減退することはないと思われます。業務遂行上「知らなかった」では済まない法令や規制が増える訳ですが、その対策として、各種セミナーや研修会に参加して頂き、ポイントやキーワードだけでも押さえて頂けましたらと思います。

<以上です。>