許認可総論 行政書士 富 之浩

みなさん、こんにちは。行政書士富之浩(とみゆきひろ)です。
行政書士は、許認可申請業務(例えば建設業許可、宅建業許可、産業廃棄物処理業許可、貨物運送許可、労働者派遣事業許可、飲食店営業許可など)を扱う資格でありますが、許認可の種類は数千種類あるといわれており、行政書士もその広範な取扱業務のうち専門分野を持って業務にあたっているというのが実情です。



私の扱う専門分野は、建設業関係許認可なのですが、建設業に関するお話をしてもそれ以外の業界の方には、興味がないと思われます。
したがいまして、本日は、独立開業をされる方が最低限知っておいた方がよい「許認可総論」についてご説明します。

まず、最初に開業を考えておられる業種について、許認可が必要な場合とそうでない場合の判断が必要です。これから事業を始めようとするわけですから、その業界が許認可の必要なものなのかどうかの判断は、同業他社からの聞き取り調査でおおむね明らかになると思いますが、行政機関では、経済産業省都道府県の産業振興課や商工課というような部署で相談にのってもらえます。
それでも許認可の必要性が明確にならないのであれば、行政書士に相談することをお勧めします。

さて、許認可取得を必要とする場合には、その許認可を取得するために必要な要件を満たさなければなりません。その許認可要件とは、おおむね次のようなものが挙げられます。
1.人的要件
過去に刑事罰を受けた者でないか、破産をして復権を得ていない者でないか、営業許可の禁止や停止を受けた経歴はないかなど。
役員や常勤の従業員に資格が必要な場合があります。例えば、建設業ならば常勤取締役の1人に5年又は7年以上の経営経験が必要など、薬局営業ならば薬剤師資格など、介護事業ならばホームヘルパー資格などです。
また役員や常勤の従業員が講習を受講し、その修了証が必要な場合があります。例えば、産廃許可講習、派遣許可講習など。

2.設備的要件
営業所の所在地の地域に制限がある場合があります。例えば風俗営業においては、学校や児童施設、病院などから一定の距離制限があります。
営業所の面積にも一定の基準があり、例えば労働者派遣許可ならば20㎡以上、外国人興業ビザで外国人が就労する場所には、9㎡以上(5名まで)の控え室を設けるなど。
必要な設備機器を備える要件がある場合もあります。例えば、フロンガス回収業者登録においては、取扱うフロンガスの種類に適応したガス回収機器など。

3.財産的要件
資本金規制がある場合があります。例えば、建設業許可のうち大規模な工事を請け負うことのできる特定建設業の許可では、資本金2,000万円以上必要です。
預金残高に基準が設けられているのは、労働者派遣事業許可申請の1ヶ月以内に800万円以上の残高が必要となります。
その他、借金の比率が高い場合や直近3年で赤字経営が続いた場合なども許認可を受けるうえで問題となるケースがあります。

以上のような要件が設けられているのが一般的ですので、これから開業しようとする業種の許認可要件を調査してから開業準備をすすめるようにしましょう。

最後に、皆様にこれだけは注意していただきたい点をご説明します。それは法人ならば設立登記前に、また営業所を賃貸借するならば契約前に、許認可の事前相談をしておく必要があるということです。
なぜならば、許認可要件を考慮したうえで「資本金」「役員構成」「本店所在地」「事業目的」を決定して登記しておかなければ、手続きが二度手間になることがあるからです。
とりわけ営業所については要注意です。例えば労働者派遣許可ならば歓楽街に事務所を設けることはできませんし、逆にクラブ・キャバレーなどは学校や病院などの近くには店舗を置くことはできません。また、飲食店やクラブ・キャバレーなどの場合、せっかく費用をかけて綺麗な内装工事をしても設備的要件を満たしていなければ、テナント契約に係る費用だけでなく工事費用までも無駄になるという事態になりかねないのです。

いずれにしても、事業を開業する際には、まず「ふくろう倶楽部」のような専門家集団に相談することが最も賢明な判断であるといえるでしょう。