リサイクル品と特許 弁理士 野口 富弘

はじめまして。
ふくろう倶楽部のメンバーの弁理士の野口です。

(所属事務所ホームページ http://www.knpt.com/

初回ということなので、簡単に自己紹介をさせていただきます(個人のブログがありませんので)。
昭和28年、和歌山県生まれ、横浜育ちの関西人です。大阪府立大学工学部を卒業後、電気メーカに約6年勤務し、その後コンピュータメーカに約20年勤務し、現在、河野特許事務所に在籍しております。
エンジニアとして企業に就職した当時、職場の弁理士先生に接し、弁理士というのは、「ちょっと変わった理屈っぽい人だなぁ」、という印象を受けましたが、まさか自分が弁理士になるとは、夢にも思っていませんでした。弁理士は、決してそういう人ではありません。
現在、弁理士は約6700名余りおりますが、ここ数年は、弁理士試験合格者の数が増え、登録5年未満の弁理士の割合が多くなっています。
多少歳を食った若手弁理士ですが、お客様満足度の向上をモットーとしておりますので、今後ともよろしくお願いします。



さて、今回は、「リサイクル品と特許」というテーマでご説明いたします。

特許権者に無断で特許製品(特許発明が使われた製品)を生産・販売する行為は、特許発明についての実施行為に該当し、原則として特許権侵害になります。
しかし、特許権者又は特許権者から許諾を受けた者が特許製品を一旦販売した場合には、その特許製品については、特許権はその目的を達したものとして消尽し、もはやその特許製品を再度使用し、販売する行為等に対して特許権を主張することができず、特許権の効力は及びません。
これを特許権の消尽の原則といい、その根拠は、市場において適法に製品を購入した者に十全な権利の取得を可能にして市場における取引の自由を促進するとともに、特許権者にとって見れば、特許発明の公開の対価を販売代金として取得できるので特許権者の意思に適ったものということです。
したがって、特許製品であっても、一旦正当に譲り受けた後は、再度販売等したとしても、原則として、何ら問題がないといえます。

しかし、リサイクル品には注意が必要です。特許権が消尽しない場合があるのです。

プリンタの使用済インクカートリッジが再利用された事案(インクカートリッジ事件判決:平成17年ネ)第10021号)で、知財高裁は、特許権が消尽しない2つの類型を判示しました。

第1類型は、特許製品が製品としての本来の耐用期間を経過してその効用を終えた後に再使用又は再生利用がされた場合です。
その理由は、特許製品の効用を終えた後に再使用又は再正利用された特許製品に特許権の効力が及ぶと解しても、市場における商品の自由な流通を阻害することにはならず、また、特許権は特許製品の譲渡に当たって、その製品が効用を終えるまでの間の使用ないし再譲渡等に対応する限度で対価を取得しているので、特許権の効力が及ぶと解しても、特許権者が二重に利得を得ることにはならないからです。

第2類型は、特許製品につき第三者により特許製品中の特許発明の本質的部分を構成する部材の全部又は一部につき加工又は交換がされた場合です。
 この場合は、加工又は交換がされた製品は、もはや譲渡に当たって特許権者が特許発明の公開の対価を取得した特許製品と同一の製品といえないから、これに特許権の効力が及ぶと解しても、市場における商品の自由な流通を阻害することにはならないからです。

なお、従来、特許権侵害の成否は、特許製品を「修理」したのか又は特許製品の新たな「生産」に該当するのかで判断されていましたが、知財高裁は、判断が困難であるということで、この判断手法は是認することができないとしています。

リサイクル品の製造・販売等が一切禁止されるというものではありませんが、使い捨て製品を使ってリサイクル品を製造・販売する場合、あるいは、そのようなリサイクル品を購入して使用する場合、特許権の侵害があり得るということは留意する必要があると思います。